こちらは美しい彫金の銀無垢ボースンズウィッスルで甲板長などが船上で指揮をするための笛になります。
多くは銅合金製や渡銀などが実用されましたがこういった銀無垢製のものは記念やプレゼンテーションのものが多いようです。今回のものはスコットランドにあったもので、1892年製作された船籍を調べてみると、ブリテッシュロイヤルネイビーの船籍は旧日本帝国海軍に納められた吉野を含め13隻このうちスコットランドで完成したものは4月24日のエドガー級巡洋艦ジブラルタル一艘になります。この船の竣工に紀念して作られたとしても全く違和感はないと思います。本体はややブイ(タンクの部分)にアタリがぽこぽことあるのと、ガン口にキズ、キールとブイの接続上部に少々キレツがありますが、笛としての機能はしっかりしております。ホールマークはバーミンガムの1892年でメーカーはTしか確認できませんが、ヒリアード&トマソンになります。
ちょうど、H&のあるべき部分に彫金されているのは意外なのですが、このヒリアード&トマソンはウィリアム・トマソンのパートナーであったジョン・ヒリアードが1870年に亡くなり、1890年にウィリアムは新しくJ J リチャードソンと組むのですが、以前と同じH&Tの銘を引き続き使っていたようで迷いからこの時にわざとH&の部分を隠して仕上げたのではないかとこちらも憶測ですが思い浮かべている次第です。
全長約9.5cm